奴隷になりたい



ブリタニア宮殿の広間に集められた兵士を前に、ルルーシュは玉座に座して無表情な顔つきで一同を見渡していた。
その隣にはナイト・オブ・ゼロとなった枢木スザクが当然のように控えている。
世界はルルーシュが神聖ブリタニア帝国の皇帝になった日から変り始めていた。





「お前達は俺の奴隷になれ」

両の瞳にギアスの紅を滾らせてそう命じれば、その場にいた全ての兵士は一糸乱れぬ統率でルルーシュに忠誠を誓う。
口許に微かな笑みを浮かべて、「これでいいか」と確認するかのようにルルーシュは横に控えるスザクに視線を向けた。
当然ルルーシュは無言で頷くスザクを予想していたのだが、彼の顔はルルーシュのその予想を裏切る表情を浮かべていた。
広間の隅の一点をじっと見つめて、訝しそうな表情を浮かべている。

「・・・スザク、どうした?」

囁くような声で問いかければ、スザクは「いえ・・・」と、低く答えて、瞳を伏せる。
妙な反応だった。
ルルーシュがその答えを見つけるためにさっきまでスザクが見つめていた視線の先へと目を向ける。
そこにはルルーシュの忠実な臣下の姿が見受けられた。

「嗚呼,、なんということだ・・・私は・・・この私は、ルルーシュ様のギアスが利かない・・・。なんとしたことだろう。憎い!憎いぞバトレー!!この私をこんな体にしたお前がこれほど憎いと思ったことはないぞ!!私もルルーシュ様の奴隷になりたいのに・・・ああ、私はどうしたらよいのだ。・・・一体どうしたら・・・」

「・・・ルルーシュ様の奴隷になれるのだ」と、嘆きの呟きを零しながら、壁に額を打ち付けているジェレミアの姿がルルーシュの瞳に映された。
ルルーシュは痛むこめかみを押さえながら、再びスザクに視線を移す。
明らかにドン引きで表情を引き攣らせているのがわかった。
思わず溜息が零れそうになる。

「誰か止めてやれ!・・・これ以上馬鹿になられては敵わない・・・」

世界を変える前にジェレミアの馬鹿を治す方が先決であることを、ルルーシュは強く感じた。




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